リーラがそう言うと、カインは笑みを深めて、

「まるで恋する乙女ですねえ」


 ほくほくと笑うカインを睨みつけて、リーラはむくれたようにそっぽを向いた。


――恋する乙女などと、そんな暢気なものではない。



 けれど、次に続くカインの言葉に、また振り返ることとなる。



「いっそ夜這いでもしてしまうのはどうでしょう?」


「な……っ!?」



 ぐりん、と音が鳴りそうなほどの勢いで振り返ったリーラの顔が、みるみる赤く染まっていく。


「この馬鹿」と、メリーがカインの頭をひっぱたいた様子を見て、リーラはふと思いついて、にやりと笑った。



「あなたたち二人の方こそ、実はいい仲なんじゃないの?」



 意趣返しのつもりで言ったが、効果はてき面のようだった。


ただし、メリーにだけ、だ。


メリーはみるみる赤くなり、照れ隠しのつもりか、ふたたびカインの頭をひっぱたく。


カインは相変わらずケロッとしたものだ。



 彼女の意外な反応にいたずら心が首をもたげた。


「図星かしら?」と、さらにからかうと、


「断じて違います! 違いますからね、殿下!」