小鳥のさえずるような声は、金の薔薇の姫君の声。


まるで姫の声に耳をすませるように鎮まった民衆の視線を浴びながら、姫はたおやかな所作で王の手を離し、地面にへたりこんだ子供に歩み寄る。



 そして、ドレスが汚れるのも構わず、地に膝をついた。



「あなた、どうしたの? わたくしに何かご用かしら」



 美しい姫に覗きこまれ、子供は顔を赤くしながら、背に隠したものを姫に差し出す。



「これっ、お花! 僕のおうち、お花屋さんだから、お姫様に似合うと思って!」



 深い紫の釣鐘草が一輪。


ささやかな贈り物を受け取ろうと姫が手を伸ばしたとき、横から誰かの手が伸びて、釣鐘草をさらっていった。



 姫が金の瞳を向けると、隣にはいつのまにか、緑の髪の王が。



 王は優しく笑んで、宝物を扱うように繊細に姫の髪をひと撫ですると、釣鐘草を姫の髪に差した。



「たしかに、金の髪に紫がよく映える。少年、なかなかの目利きだ」