「……それじゃあ、神官長の許可も出たわけだから」
リーラはぽん、と手を叩いて、手近にあった小さな岩に腰掛ける。
「二人に愚痴を聞いてもらおうかしら?」
「おや、さっそくですか。いいでしょう。痴話喧嘩でもなさいましたか?」
にこにこしながらそんなことを言うカインに、メリーが黙って手刀をかました。
「痴話喧嘩ができるような関係になれたら上々だわ。陛下はまず、わたくしに会ってもくれないんだから」
「陛下も今はいつにも増して忙しいときですからね」
「そう、それよ! 忙しい忙しいって、何にそんなに手を煩わされてるのか、わたくしには知らされないの。知らなければお手伝いもできないじゃない!」
リーラはそろえた膝に肘をついて、右手で頬杖をついた。
およそ王妃らしくないふるまいに、メリーはすこし驚いたように目を瞠ったが、カインは表情を変えずに、
「陛下も、王妃殿下のお手を煩わせるようなことにはしたくないんだと思います。
それに、ウィオンでは女性が政治の場に出ることがありませんでしたから、殿下が悪目立ちして嫌な思いをさせたくないんじゃないですか?」
と、あくまで穏やかに言う。



