「とんでもない。姫殿下とお話をしてきたとなると、神官たちも小言を言いにくいでしょう」
そう言うと、レーヴェは冗談めかして片目をつむってみせた。
リーラは礼儀正しく笑みを返すと、
「ありがとう。それじゃあわたしはお言葉に甘えて、カインとメリーに愚痴でも聞いてもらおうかしら」
どうぞごゆっくり、とレーヴェは礼をして去っていく。
その背が宿舎のほうへ消えるのを待って、リーラは口を開いた。
「思慮深そうな見た目に反してずいぶんと茶目っ気のあるひとなのね」
肩をすくめると、カインとメリーはクスリと笑って頷いた。
「あんなことを言ってるけど、仕事はきっちりなさるひとなんですよ」
と、カインが言う。そうなのだろう、とリーラは心中で頷いた。
カインやメリーの様子からしても、下の者に慕われる人物だと見てとれる。
そういう者は、仕事だけでもなく茶目っ気だけでもなく、両方兼ね備えたうえでうまく均衡を保てているものだ。



