ウィオンの神官は、カインといいレーヴェといい、王妃であるリーラに対して必要以上に畏まらない。
彼らにとって最上の敬意を払うべき存在は母なる神であり、王や王族も神の下では取るに足らない存在であるという思想のためであろうが、リーラにはそれが心地よかった。
「来てはいけなかったかしら?」
「とんでもない。神殿はすべてのものを受け入れる場所です。信じる者も信じない者も、等しく」
「そう。それならよかったわ。ずっと部屋とお庭を行き来するだけじゃあ退屈だったのよ」
リーラが肩をすくめてみせると、レーヴェはくすりと笑って、
「では、今日からはここで空いたお時間を過ごされるといいでしょう。カインやメリーも、喜んで殿下のお話し相手になりますよ」
わきに退いていた二人が、同意するように頷く。
「では、私はこれで。仕事をほうっておいて息抜きに来ていたので、そろそろ神官たちが探しにくる頃でしょうから」
「あら、そうだったのね。引き留めてしまってごめんなさい」



