王家直属の近衛兵には、付いている王族の紋章――リーラであれば金の薔薇、アルザであれば銀の錨の紋章が刺繍されている。
メリーの制服の胸元には、植物の葉が三枚、それぞれが三角を描くように配置された紋章が、緑銀の糸で刺繍されていた。
神殿入り口のレリーフとよく似たそれは、樫の葉だろうか。
この紋章がついてるのが神殿守りですよ、と、カインが言った。
「ウィオンの神殿には、最低一人、神殿守りと呼ばれる用心棒がつくんですよ。まぁ、神殿専門の門番のようなものです。
平時にはその名の通り神殿の警備や高位の神官方の護衛を務めますが、戦時には他の兵たちと共に前線で戦うことも昔はあったようですよ」
「城の他の門衛とは違うの?」
リーラが首をかしげると、カインが「はい」と頷く。
「神殿守りは神籍の者ですから、通常、神殿や神官以外には仕えません。
神殿守りは神官が鍛錬の末に神殿守りとなるときもあれば、元々武人だった者が神籍に入って神殿守りになる場合もありますけど、まぁ、ほとんどは後者ですね」



