さあ、と、アルザは姫を促す。
人懐こく快活な笑みは、王というにはあまりに少年らしい。
対して姫は控えめで柔らかな、いかにも姫君らしい笑みを返す。
花の咲くような美しい微笑みに、集まった民衆の中からどよめきが広がった。
まさに黄金の薔薇。
その紋様にふさわしく、陽の光に照らされた金の髪に、可憐ながら華のある笑みはよく映える。
共に歩みを進める王と姫の行く先に、ふと、小さな男の子がまろび出た。
あの、と声を上げた子供に、近くに立っていた兵士が大股で近づいていく。
「そこの子供、控えよ! 陛下と王妃殿下の御前であるぞ!」
威圧的な兵士の声にビクリと肩を震わせ、子供は道を開けようとした。
しかし。
「いいのよ。わたくしを気遣ってくださった優しい兵士さん、そんなに怖い顔をなさらないで?」