多くのヴェルフェリア大陸の国々がそうであるように、シュタインもまた、サザラ教を国教として保護しているが、ウィオンの神殿とシュタインの神殿は大きく様子が異なる。


ウィオンのほうは神殿の奥に通路が伸びて神官たちの宿舎に繋がっている。


それに対しシュタインをはじめウィオン以外の国では神殿の建築はかなり簡略化され、神官たちの宿舎となる円形の建物の中庭に神の樫が祀られるのみで、神殿と宿舎が分かれてもいなければ、森の様相を呈してもいない。


古い神殿は別だが、たいていの神殿は蔦で覆われてもおらず、それゆえに壁は緑の漆喰で塗られている。


やはり王神殿はさすがは総本山と言うべきか。



 樫は母なる神の木。


樫の葉のレリーフが刻まれたアーチ型の入り口をくぐったリーラは、草花の上に片膝をつき、樫に向かって両の手を胸の前で組み合わせるサザラ教式の礼をした。


そうして顔を上げ立ち上がろうとしたとき、神木の下に二つの人影を見とめてリーラは思わず動きを止めた。



 近衛兵の制服を着た短い珊瑚色の髪の若い女と、緑の法衣に身を包んだ長い金の髪の男。