シュタインとウィオンの友好を保つ存在であり続けるためには、リーラがウィオンに受け入れられ、かつシュタインを軽んじることなどできないくらいに力のある存在とならなければならない。


そのためにリーラは、この王宮のなかで敵を作ってはならない一方で、王の影に隠れる弱い姫であってはならないのだ。



 力を得るために、なによりもまず必要なのは情報。



 ほしい情報をはたして神殿で得られるかどうかはわからない。


しかし、行動するなら早いほうがいい。


〝ウィオンの勝手が未だわかっていない異国の姫〟という隠れ蓑は、王宮に来て間もない今しか使えない。



「クロエ、神殿に行くわ。ついていらっしゃい」



 リーラは立ち上がると、焼き菓子の最後の一つを口に放りこんだ。