「……さぁ? わたしにはよくわかりません」



 申し訳ありません、と頭を下げるクロエに笑って首を振り、リーラは窓の外を見つめた。



 古い慣習にとらわれ続けたこの国は、祖国シュタインとは違って、女が政治に首を突っ込むことを良しとしない文化だ。


だからこの国の詳しい情勢を、誰もリーラに伝えようとはしない。



(だったら、情報は自分で掴みにいかないとね)



 だからこその神殿だった。


政治と直接の関わりを持つ王宮の者と、女であるリーラが接触するのはあまりに目立つ。


けれど、他でもない現国王によって表向きは政治と切り離された神殿ならば、あるいは――。



 王妃という身分は政治側の人間であるが、女であるがゆえに政治と関わりを持つとどうしても目立ってしまう。


そんな微妙な立場にあるリーラだが、黙ってレグナムから流される情報だけを待っていては、今の立場を変えることなどできない。



(わたくしは、シュタインの姫でありウィオンの王妃なのだから)