Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-




「陛下は今日もご公務がお忙しいのね?」



 多分に嫌味を含んだその言葉に、レグナムは唇の端をわずかに引きつらせた。



「姫殿下……、ご不満はわかりますが、陛下は本当にお忙しいのです。クーデターの末に王座につかれてからというもの、ウィオンに長年くすぶっていた多くの問題に加え、大胆な改革により出てきた新たな問題を、なんとかしようと日々奔走なさっております」



 レグナムの言っていることはわかる。


アルザの治世になってから、ウィオンは大きな変革のただ中にある。


リーラもウィオンの情勢について、一通り勉強してきているので知っていた。



 島国ウィオンはヴェルフェリア地方の国々のなかでも特殊な国だ。


歴史の記される前から存在すると言われる神秘の国であり、ヴェルフェリアの九割の民が信仰するサザラ教の聖地でもある。


占により神の言葉を下し、それをもとに政治をおこなってきたウィオンでは、ときに占の結果により王がその位を追われることもあるほど、神殿の力が強い国であった。