「陛下は今日もご公務がお忙しいのね?」
多分に嫌味を含んだその言葉に、レグナムは唇の端をわずかに引きつらせた。
「姫殿下……、ご不満はわかりますが、陛下は本当にお忙しいのです。クーデターの末に王座につかれてからというもの、ウィオンに長年くすぶっていた多くの問題に加え、大胆な改革により出てきた新たな問題を、なんとかしようと日々奔走なさっております」
レグナムの言っていることはわかる。
アルザの治世になってから、ウィオンは大きな変革のただ中にある。
リーラもウィオンの情勢について、一通り勉強してきているので知っていた。
島国ウィオンはヴェルフェリア地方の国々のなかでも特殊な国だ。
歴史の記される前から存在すると言われる神秘の国であり、ヴェルフェリアの九割の民が信仰するサザラ教の聖地でもある。
占により神の言葉を下し、それをもとに政治をおこなってきたウィオンでは、ときに占の結果により王がその位を追われることもあるほど、神殿の力が強い国であった。



