私、今から詐欺師になります

「あの、此処に。
 パソコンの枠に薄く鉛筆で最初にログインするときのパスワードが」
と茅野が指差す。

「誰っ、こんなとこに書いてるのっ。
 消してっ」

「八重島(やえじま)さんですよー」
と初老のオヤジの名前を告げる。

 あのジジイッ、と思いながら、パソコンの画面を閉める。

 茅野の手ごとノートパソコンを閉めてしまい、いてて、と茅野が声を上げていた。

 ……恐ろしい女だ。

 このログインパスワードを使っても、ネットワークの入り口までしか入れなかったはずなのに。

「この子にはお茶でも淹れさせときなさいよっ」

 振り返り叫んだが、
「ええーっ。
 こんな綺麗な人にお茶淹れてもらうとか緊張しちゃうからー」
とみんな、へらへらしている。

 まったく……。

「あの、私、淹れますよ」
と茅野が立ち上がった。