恋愛じかけの業務外取引





土曜日、午前10時。

迷いに迷ってニットワンピースに身を包んだ私は、都心のとある駅に降り立った。

歩きやすい靴でというので、足元は歩きやすいローヒールのショートブーツを履いている。

ヒールは3センチ弱だから、172センチの彼を越すことはない。

「お、マヤじゃん!」

背後から聞こえた声に、振り返る。

「なんだ、同じ電車乗ってたんだな」

にっこり微笑む私服姿の堤さんに、早くも胸がキュンと疼く。

ネイビーのミリタリージャケットにカーキのパンツを合わせたシンプルな装いの彼は、スーツを着ているときよりさらに若く見えるからズルい。

「私は同じ電車だろうなって思ってたよ。お互いの最寄り、3駅しか変わらないもん」

「つーかマヤ、今日スカートじゃん。珍しい」

指摘されて、ドキッとした。

私は仕事ではいつもパンツスーツだし、堤さんの家に行くときもデニムかチノパンだ。

下着パンツを見せたことはあっても、スカートを履いた姿なんて見せたことがなかった。

でも、私だって好きな人と歩くときくらい女らしく見られたいのだ。

「デートって言われれば、それらしい格好くらいできるよ」

「うん。いつにも増してかわいい」

「そういうのいいから」

「ははは、照れてる」

堤さんはちょくちょく私を「かわいい」と言う。

男性からの評価といえば「でかい」「怖い」「強そう」といった類いの言葉ばかりだったから、私は簡単に舞い上がってしまう。