恋愛じかけの業務外取引


「あー、ディスプレイか」

「うん。規定で使える色が決まってるし、難しいの」

いくつかデザインを作成して上に提案したのだが、どれも『目新しくない』とボツになっている。

自然派ホームケア用品のお店ということもあって、これまでのフェアでは木や草花などをモチーフにしたデザインが多かった。

そして私も例に漏れず、草花のデザインを提案していた。

求められているのは目新しさ。

それではダメなのだとわかっていても、そう簡単にアイデアは降ってこない。

「そっか。マヤはバイヤー以外にもいろいろやらなきゃいけなくて大変だよな」

「まあね。堤さんほどじゃないけど」

トラブルが発生したり仕事が重なったときは忙しくなるけれど、おおかた定時から1時間以内に帰れる。

週に3回午後9時までに会社を出られたらラッキー、くらい多忙な彼に比べればきっと楽なはず。

堤さんが、なにかを思いついたように大きな瞳をこちらに向けた。

「次の土曜日。デートしよう」

「は? デート?」

「東京来てからほとんど観光もできてないし、付き合え」

「付き合えって……別にいいけど」

どうしよう嬉しい。

なに着ていけばいいんだろう。

「歩ける靴で来いよ。たとえ歩けても高いヒールはダメだぞ」

「なんで?」

少しくらいヒールがある靴の方が、女らしく見えるのに。

彼は唇を尖らせた。

「マヤがヒール履くと、俺がチビに見えるだろ」

「ぷっ……あははははは! そんな理由?」

「笑うなよ。俺だって女と歩くときくらいカッコつけたいの」

いい年して頬を膨らませる彼が、どうにも愛しい。

この約束だけで、残りの平日を頑張れる気がした。