「なんだ、そういうことだったんだー。私てっきり、堤さんが本当に山名さんを男性側に連れてくるんだと思っちゃいましたよ」
菜摘は気にしたような素振りもなく、ケラケラと笑った。
本当に邪気がないように見えるのだからすごい。
「ははは……」
菜摘の言い草に、さすがの堤さんも乾いた笑いを漏らした。
「店長ー?」
向こうでスタッフのひとりが菜摘を呼んでいる。
「はーい」
彼女は明るく返事をして、スタッフのもとへ向かっていった。
彼女に確認したいことは聞けずじまいだったが、引き止めてまで彼女と接する気力は残っていない。
別に急ぎの用事ってわけでもないし、また今度でいいや……。
「なんか、ごめん」
堤さんが肩をすくめる。
私をダシに使ったことを詫びているのだろう。
「モテモテじゃん。私、もしかしてお邪魔しちゃった?」
「いや、むしろ助かった。佐原店長、遠回しに断っても上手く返してくるから困ってたんだ」
「ハッキリ断ればいいのに」
「それができれば苦労しないよ。あの手のタイプの女は、機嫌を損ねるとめんどくせーじゃん」
そのような経験があるのか、うんざりしたようにため息をつく。
モテ男にはモテ男の苦労があるのだろうが、私の知ったこっちゃない。



