恋愛じかけの業務外取引


反響について話を聞きたいのだが、店長である菜摘の姿が見えない。

スタッフに聞けば店舗にはいるというので探し歩いていると、背の高い棚を挟んだ隣の通路の方から声が聞こえてきた。

「あははは、やだーもう。堤さんってほんとおもしろいですね。見た目もカッコいいし、きっと超モテるんでしょう?」

菜摘の声だ。

ていうか堤さんもそこにいるの?

「いやいや。僕、全然モテなくて困ってるんですよ」

「そんなの絶対嘘ですよね。思い切って聞いちゃいますけど、堤さんって彼女いるんですか?」

なにこの会話。

まるで菜摘の逆ナンだ。

モヤッとしつつ、思わず聞き耳を立ててしまう。

「彼女と呼べる人はいないかな」

「じゃあ今度、一緒にご飯にでも行きません? 私も今フリーなんですよ」

え? なにそれ。ほんとに逆ナンじゃん。

この子、こんなにアグレッシブだったの?

「ご飯、ですか」

「あ、急にふたりじゃアレなんで、お互いに誰か連れてくるとかどうですか?」

カモフラージュに誰かをなんて提案しているが、彼女が堤さん狙いなのは明らかである。

菜摘は私と違ってかわいいし、女の子らしいサイズだし、家事だってきっと私より得意だ。

酒を飲んで彼を殴ったりすることもないだろう。

これまでの人生、私が自分から好きになった人はいつも、私ではなく菜摘のようなかわいい女の子を好きになった。

だから堤さんも、こんな子に言い寄られたらきっと……

「じゃあ、僕は山名さんを連れていきます」