会社に戻って残務を片付け、スーパーに寄って堤さんの自宅前に到着したのは午後7時半。
いつものようにインターホンのボタンを押すが、反応はないし、扉も開かない。
……わかってはいた。
【帰宅は9時過ぎになる見込み】と、事前に彼からメッセージが来ていた。
それでも一応インターホンを押したのは、すぐに合鍵を使うのが照れくさかったからだ。
私はバッグにこっそり忍ばせていたこの部屋の鍵を取り出し、いったん深呼吸。
ドアノブの上にある鍵穴に鍵を差し、回す。
その時の感覚がうちの鍵よりずっと軽くて驚いた。
人の家の鍵を開けるなんて、なんだか悪いことをしているみたいでドキドキする。
ご近所の人が見たらどう思うんだろう。
彼女? 奥さん?
なんて想像して、一人で勝手に照れた。
ソワソワしていたら怪しく見えると思い、ためらうことなく堂々と扉を開ける。
真っ暗な彼の部屋が見えたのと同時に彼のにおいが漂ってきた。
玄関へ入り、街灯の光が遮断されて真っ暗になる前に玄関の明かりをオン。
扉を閉めて施錠すると、いよいよ盗みにでも入ったような気分になって余計に緊張してきた。
「お邪魔します」
靴を脱ぎ、部屋に上がってダイニングの明かりを点ける。
いつもと同じ明るさになるとホッとした。
……が、部屋の様子を見て、私はこう呟かずにはいられなかった。
「マジか」



