恋愛じかけの業務外取引


「佐原店長ー」

菜摘が撮影スタッフに呼ばれている。

「はーい。では堤さん、今日もありがとうございました。お顔のアザ、お大事にされてくださいね」

「ありがとうございます」

彼女はお得意の癒しスマイルを見せ、撮影班の方へ。

照明の準備が整ったようで、パシャッと数回試し撮りのフラッシュが光る。

予定通り撮影が始められそうだ。

1号店は有名な商業ビルの1階にあり、インテリアはほぼ全てが木材の、ウッディな店である。

広さ10坪ほどの店内には今、ラブグリの店舗スタッフが菜摘を入れて3人、撮影班が3人、私のようにラブグリ本社から来た社員がもうひとり。

営業時間であるため、お客さまも数名いる。

「では、私も仕事に入りますので。納品ありがとうございました」

私は軽く頭を下げ、そそくさと堤さんのもとを離れる。

このままふたりになったら、今度はなにを言われるかわかったもんじゃない。

撮影班の人と混じったタイミングで視線を戻すと、店舗を出ようとしている彼とバッチリ目が合った。

彼は私をからかうとき特有の笑顔で、声は出さずに口を大袈裟に動かした。

『あとでみて』

そして自分の携帯をこちらに向け、反対の手で指差す。

私宛になにか連絡を入れたらしい。

なるほど、出勤要請ですね。

私が数回頷くと、彼はいつもの爽やかスマイルを見せて、

「失礼しましたー」

と言って去っていった。