恋愛じかけの業務外取引


ラブグリ全店共通、秋冬の制服である黒のVネックカットソーにベージュのエプロン。

ライトブラウンの髪は胸までの長さで、前髪が厚めにとってあり、シュシュでサイドにまとめてある。

あからさまにぶりっ子の松田とは違って、ナチュラルなかわいさが好印象。

きっとこういう子なら、男性に甘えるのを許されるに違いない。

「準備は順調みたいだね。インタビューの台本、渡しておくね」

今回の撮影では、事前に出版社からアンケートをもらっている。

インタビューはアンケートに沿って行われるので、我々会社の人間は事前に台本を作成している。

そしてその台本をもとに、菜摘が回答をするのだ。

「ありがとうございます。商品の撮影が終わったらすぐに読みますね」

「よろしく……ん?」

撮影スタッフが照明のセットなどをしている向こう側に、なにやら見覚えのある人物がいるような。

私が彼に気づくと、ちょうど彼も私がやって来たことに気づいたようで、彼は一瞬だけ目を丸くして、にっこり爽やかに微笑んだ。

「山名さん! いらしてたんですか」

堤凛太郎である。

彼は胡散臭いほどの笑顔で私たちの方へやって来た。

「堤さん……お疲れさまです。配達ですか?」

「はい。ひとつ品切れしそうだということだったので、お持ちしました」

本来、配送は堤さんではなく、当然配送業者が行う。

しかし1号店に限っては、イズミ商事や配送センターが近いこともあり、こうして彼が直接店舗へ届けてくれることがあるのだ。