「えー、変な言い方かな?」
わざとだ。絶対わざとだ。
だって今、こんなにも悪い顔をしている。
課長が出て行くまでの嫌味なほどに爽やかな笑顔はどこ行った。
「変です。ていうか、私が敬語を使うのになんの不都合があるんですか」
私はあなたより年下だし、加害者だし、ビジネスパートナーだ。
敬語を使う方が自然ではないか。
堤さんはつまらなそうに頬を膨らませた。
「家に帰ってまで仕事してるみたいで、嫌なんだよ」
「仕事って、その程度で?」
あんなに散らかしても平気で生活しているくせに、妙なところで繊細にならないでほしい。
「リラックスしたいの、俺は。だからマヤも俺んちでは敬語禁止な」
「わかりましたよ。家では敬語をやめますから、会社で変なことするのはやめてください」
「俺別に変なことしてねーし」
「しました! 髪に触りました!」
「なんだよ、最初に激しく触れてきたのはマヤだろ」
「ちょっ……言い方!」
この人と話していると、ペースが狂う。
仕事だけの付き合いだったときは、そんなことなかったのに。
ふたりでやいやい言い合っていると、電話を終えた斉藤課長が部屋に戻ってきた。
課長は急に黙った私たちの様子を見て首を傾げる。
「君たち、そんなに仲よかったんだ」
勘のいい課長にマズいことがバレてしまいそうで、私は堤さんと距離を取る。
かたや堤さんは、お得意の爽やかスマイルで堂々と告げた。
「ええ。僕たち、個人的にも連絡取り合う仲ですから」
だから、言い方!



