「ここで飲むお茶は、いつもバラエティ豊かで美味しいですね」
堤さんはまだ熱いお茶を何度か啜ってそう言った。
だったら松田を女性として紹介しましょうか。
彼女は大いにあなたに気がありますし、きっと喜んであなたの世話をすると思いますよ。
美味しいお茶もたくさん飲めますし。
試しにお付き合いしてみてはいかがでしょうか。
そうなれば、私はお役御免ですよね。
彼女ができるまでって、言ってましたもんね。
……と捲し立てたくなったのをグッと堪えて営業スマイル。
「ありがとうございます。この茶葉もラブグリ各店で扱っておりますので、是非」
私情を抑え、あえてビジネスライクに商品をお勧めする。
彼は楽しげに口の端を上げた。
「そうですね。家でもこんなお茶が飲めると嬉しいです」
――お前が買ってきて家で淹れろよ。
なにか副音声のようなものが聞こえた気がする。
その証拠に、今、テーブルの下で“ちょんちょん”と靴をぶつけてきた。
私も負けじと笑顔をキープ。
「サンプルのティーバッグがございますので帰りに差し上げますよ」
足を引き、もう合図などできないくらいの距離を取る。
「ありがとうございます。今夜、帰宅したら淹れてもらおうかな」
このセリフに、課長が食いついた。
「あれ、堤さん。独り身だって言ってたけど、とうとうお茶を淹れてくれる子が見つかったの?」
堤さんは一瞬私を見て、課長に笑みを向ける。
「ええ、おかげさまで」
誤解を生むようなことしないでよ!
私が課長に見えない角度で軽く睨むと、彼はまた満足げに口の端を上げるのだった。



