「取引開始は4月からだし、年明けでもよかったんじゃないの?」
「よくない。年明けまでマヤに触れないなんて耐えられるかよ」
肩にのせられていた頭が動き、首に甘い刺激が走る。
ほぼ同時に着ていたジャケットが脱がされた。
「契約なんてなくたって、呼ばれたら飛んで来るよ」
私も同じように彼のジャケットを脱がし、ネクタイを緩める。
「それじゃ約束を守ったことにならないじゃん?」
「私たち、すでに2回いたしちゃってますけど」
「だからこそ、絶対に契約取らなきゃいけなかったんだよ」
既成事実を作ってしまったからには、責任を果たさなければならない。
私はそんなことなにも知らずに必死だったけれど、彼は彼とて必死だったのだ。
それならそうと言ってくれればよかったのに、きちんと秘密にしていたのは彼の誠実さ故だ。
聞いていたら、私はもっと楽に契約が取れる会社の商品をリクエストしていただろう。
かわいい顔以外の彼の魅力は、私だけが知っていたい。
「ねえ、そういえばいつから……」
「なあ俺もう我慢できない本気のチューしていい?」
私の言葉を遮って早口で請う。
しかし許可を与える間もなく唇が触れ合う。
聞きたいことは山ほどあるのに、幸福感に満たされて言葉はどこかへ行ってしまった。
彼しか見えなくなってしまった私は、もう彼と愛し合うことしか考えられない。
言葉はまたあとで交わせばいい。
私たちには、これからたっぷり時間があるのだから。



