恋愛じかけの業務外取引


――タン!

滑らかに動く建て付けのよい障子が、木枠に強く当たって音を立てる。

ふつうの人の出入りとは明らかに異なる開扉音が響き、自ずと社員たちの注目が集まった。

来るはずのなかった堤さんの姿を見つけ、女子社員たちが色めき立つ。

しかし彼のただならぬ雰囲気に、間もなく落ち着きを取り戻した。

いつも笑顔の彼がニコリともしないし、いつも険しい顔をしている私は顔を真っ赤にして照れている。

だって『愛してる』なんて言われたのは人生で初めてだったのだ。

そんな私たちふたりが手を繋いでいる様子は、彼らにとってさぞかし異常な光景であることだろう。

堤さんは個室内をぐるりと見渡して、なにかを探している様子。

扉を開けてから数秒の間に室内はめっきり静かになった。

ここで斉藤課長が異常を察知して目を開け、夢うつつの顔で辺りを見渡す。

私と堤さんの姿を認めると、酔いが覚めたように目を丸くした。

堤さんも斉藤課長を見つめている。

彼が探していたのは課長だったようだ。

「斉藤課長。お約束通り、例の契約を取って参りました」

手に持っていた書類を突きつけ、個室中に響く声量で言い立てる。

そこそこ広い個室内がかすかにどよめいた。

誰もが彼の一挙一動に注目している。