恋愛じかけの業務外取引


宴会開始から約2時間。

みんなほどよく酔い、お腹も満たされ、盛り上がりも落ち着いてきた。

酒を飲まずに宴会に参加するのは初めてだった。

飲めない人にとって、宴会なんて苦痛でしかないのではないかと思っていたけれど、飲まずとも楽しめるものだとわかってよかった。

お手洗いに行って席に戻ると、斉藤課長が酔い潰れて壁に背を預けて眠っている。

課長が酒に弱いのは周知の事実だが、彼の横に座る松田が上手に飲ませたに違いない。

顔色ひとつ変えずに焼酎を飲み続けている彼女が、私を見るなり私のバッグを指差した。

「山名さーん。携帯が鳴ってましたよ」

「ほんと? 誰だろう」

バッグから社用携帯を取り出す。

【不在着信 1件】と表示された部分をタップし、ロックを解除。

表示された名前に、自分の脈が強くなったのを感じた。

【イズミ商事 堤さん】

直後、手の中で携帯が震えだす。再び堤さんから着信だ。

「私、ちょっと電話出てきます」

周囲に声をかけ、障子で仕切られた個室の外へ。

移動している間にまた着信が切れてしまったので、今度はこちらからかけ直す。

彼はコール音をほぼ鳴らさずに出た。

『イズミ商事、堤です』

「ラブグリーンの山名です。お電話、すぐに出られなくてすみません」

社用携帯ということもあり、いったん社会人らしく挨拶を交わす。

いつも通り、話し方はすぐに砕けた。