恋愛じかけの業務外取引




「今年も一年お疲れさまでした。かんぱーい!」

「かんぱーい!」

午後6時。忘年会がスタートした。

企画営業部のメンバーだけではなく、お世話になっているメーカーや商社、輸入代理店の人たちもいるが、電話があった通り堤さんはいない。

「あれぇ。山名さん、今日はウーロン茶ですかぁ?」

見かけによらず酒豪の松田が、中ジョッキを一気に空けて首を傾げた。

「うん。いろいろあって、ちょっと禁酒中」

またなにか合わない酒を飲んで、誰かを殴ったりしては敵わない。

「えー、つまんなーい。私についてこれるの、山名さんくらいだったのにー」

「いやいや、誰もあんたにはついていけないから」

松田以上に飲める人間なんて、私はこれまでに見たことがない。

といっても、飲める分酔い方もスゴいのだけれど。

いつか松田も私のような失敗をしないか心配だ。

「いろいろって、なにがあったんですか?」

「言えない。私の人生最大の黒歴史だもん」

「今日は忘年会ですし、たくさん飲めばその黒歴史、忘れられると思いますよー」

そう言って、注文するための機械を『ビール・サワー』の画面にしてよこしてくる。

「誘惑しても無駄だからね」

「ちぇー」