「残念会、する?」
右隣に座った堤さんが尋ねてきた。
前回のお祝いも、提案してきたのは堤さんだ。
「前に行った沖縄料理屋さん?」
「いいね、そうしようか。泡盛飲んでもいいぞ」
あの日の私の失態を思い出したのか、クスクス笑っている。
よっぽどみっともない酔い方をしていたに違いない。
堤さんはあまり酔わないし、酔ってもかわいくなるだけだからズルい。
「また殴られる覚悟があるってこと?」
「いや、それはもう勘弁」
彼の左頬には、もうアザなんてどこにも残っていない。
私たちの業務外取引も終わってしまった。
ここのところお互いの仕事がうまくいかなくて恋愛どころじゃないというのはたしかだけど、私たちの関係は曖昧なままスッキリしない。
ブルーメとの商談が成立したら関係が進むのかなって思っていたけれど、うまくいかなかった。
私たちはこれからどうなるのだろう。
私はもう何度も彼に思いを伝えた。
『もう少し、俺を見てからジャッジしてほしい』なんて言っていたが、私の気持ちは変わらない。
なんとなく、20代のうちに生涯の伴侶を探し出すのを目標としていた。
20代のうちにめぼしい人が見つからなければ結婚を諦めて仕事に生きることになるだろうと、漠然とではあるが考えていた。
だって20代と30代って、きっと男の人にとっては全然違うから。
女盛りに丸3年誰とも縁のなかった私がフリーのまま30代になるということは、そういうことだと思った。
諦めかけていたけれど、ここにきて素敵な人を見つけた。
恋愛下手な私なりに、勇気を出してがんばった。
でも、あと数時間で20代が終わってしまう。
……なにひとりで焦ってソワソワしてるんだろう。
堤さんは明日が私の誕生日だなんて、知らないのに。



