12月20日当日。
待ち合わせは羽田空港第2ターミナル。
毎日メールで業務的な内容のやりとりはしていたけれど、顔を見るのは個人的な取引終了の通告を受けたとき以来だ。
それまで頻繁に交わしていた下らないLINEのやりとりも、あれ以来一度もない。
「堤さん、おはようございます」
「おはよう……山名さん」
“マヤ”と名前で呼んでくれないのは、今が仕事中であるからか。
それとも、私たちの2ヶ月間をなかったことにしたいからか。
私たちは様々な思惑を含んだ視線を数秒間絡め合って、先に堤さんの方が目を逸らした。
なんだかいつもより爽やかさに欠けている。
ここ最近、仕事のメールが午後11時台に来ていたりしたし、年末に向けて忙しいのだろう。
ちゃんと食事はとっているのだろうか。
ぐっすり眠れているだろうか。
32歳のくせにシワひとつない美しい肌が、なんとなく荒れているような気がする。
触れて確かめたいけれど、私たちはもうそこまで近しい関係ではなくなってしまったような気がする。
伸ばしかけた手を引っ込め、コートのポケットへ収める。
久しぶりに会えた嬉しさが、触れられない寂しさで相殺されてしまった。
「はい。これ、チケット」
「ありがとうございます。私の分の手配までしていただいて」
努めてお仕事モードで告げると、彼は少し寂しそうな顔をした。
だったらどう接しろというのか。
この微妙な感じが、正直辛い。



