恋愛じかけの業務外取引


課長の問いに、私の肩がぎくりと震えた。

明日のことはあまり考えないようにしていたのに。

「いいんです」

「君たち前回も日帰りだったでしょ。うちは経費も余ってるし、九州まで行くんだから泊まっていいんだよ?」

「泊まりじゃない方が都合がいいんです。翌日だって仕事なんですから」

明日、12月20日。

私と堤さんは、九州にあるブルーメを訪問し、再び直接交渉をさせてもらえることになった。

おそらくこれが最後のチャンスである。

これでダメなら、もうスッパリ諦めるつもりだ。

「せっかくふたりで遠くへ行くのに。山名さん、有給も余ってるよ?」

課長は解せない顔をする。

「遊びに行くわけじゃないんですよ。それと、何度も言いますけど、私たち付き合ってるわけじゃないですし」

特に誰かに聞かれている様子はないが、後半は声が小さくなった。

課長はますます解せない顔をする。

「傍から見てるとイライラするほどにじれったいね。さっさとくっつけばいいのに」

「ほっといてくださいよ」

私だって、くっつきたいのはやまやまなのだ。

がんばったけれど、そばにいる資格を失ってしまった。

「まあ、りんりんの気持ちもわからなくはないかな。というか、僕のせいかもしれないし」

課長が意味深に呟く。

「えっ? それどういうことですか?」

私は無意識に身を乗り出した。

必死な私を見て、課長は満足げに口角を上げる。