そもそもこのフェアは、うちの上層部の思いつきで始まった。

この規模の会社ではよくある話だが、重役の鶴の一声で物事が決まってしまうのだ。

年間スケジュールにもなかった全国規模のイベントを準備期間2ヶ月弱で成功させろというのは、そもそも無理がある命令だった。

なんとかここまでできた自分を大いに褒めていただきたいところである。

イズミをはじめ、協力してくれた取引先各位にも感謝している。

完売商品を出してしまったことで尻すぼみになってしまったが、売上だけは上々。

取引先各位の業績にも繋がったことだろう。

しかし、今回の件でお世話になっている取引先に無理をさせてしまったのも確かだ。

我々の信頼を守るため、今後は特別に必要でない限り、思いつきでイベントなど開催すべきでない。

メーカーの原料確保の期間を考慮して、せめて半年間以上の準備期間を設けるべきである。

今回のフェアの報告書には、このような内容を盛り込んである。

これまでにも幾度となく思いつきで社員を動かしてきた上層部が素直に反省してくれるとは思っていないが、認識はしておいてもらわねばならない。

短期的な売上は爆発的に上がったから、数字しか見ない上層部は味を占めるかもしれない。

それは非常に困る。

「ところで山名さん。明日の出張、ほんとに泊まりじゃなくていいの?」