『取引しようぜ』

『取引、ですか?』

『そう。もちろん業務外の、ね』

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堤 凛太郎 殿

念書

私・山名マヤは貴殿を理不尽に殴打した償いとして、無償で貴殿の生活における家事全般を補助・代行することをお約束いたします。
なお、これに違反した場合、貴殿が刑事告訴を行っても不服を申し立てません。

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恋をすることに必死すぎて、己の犯した罪や取引のことなんてすっかり忘れていた。

私は彼を傷つけた憎むべき加害者で、これは私の社会的地位と家族を守るための大事な取引だった。

『俺に女ができるまで、あるいは気が済むまで。慰謝料の倍額分こき使ってやるよ』

女のあたりは考えないことにして、きっと気が済んだのだ。

慰謝料の倍額分、しっかり働いたと認めてくれたのだ。

だったら。

『ゆくゆくは俺に依存させたい』

『俺に依存して一生俺の面倒見てろよ』

この言葉はなんだったの。

今でも私の手の中にある合鍵はなんなの。

『人は思い通りにいかないものに執着する』

彼の言った通りだ。

私は個人的な取引が打ち切られたにもかかわらず、あまりに思い通りにいかなくて、今でもずっと彼のことばかり考えている。