大手都市型ホームセンターは、ラブグリよりずっと幅広い層に知名度がある。

集客力や売上の金額はもちろん、メディアに取り上げられる機会も桁違いだ。

堤さんにとっては、ラブグリよりずっと大きなクライアントである。

今回、モデルのNaoがフィーチャーしてくれたことで人気が出たのを受けて、ホームセンター側もフローリングシートの入荷が必要になった。

オリオンにとっても、中堅のうちより大手で売り出してもらった方がメリットがある。

おそらく彼は圧力をかけられた。

小売りとメーカーの両方に。

「ごめん。俺じゃどうしようもなかった」

「謝らないで。悔しいけど、うちじゃ敵わない。仕方ないよ」

「でも、フェアが……」

「大丈夫。うちの商品はフローリングシートだけじゃないんだよ。ラブグリをナメないで」

正直なところ、こんなの彼への気休めだ。

商品を取られて客足が減ってしまうのは、もう避けようがない。

「自分が無能すぎて泣きそうだよ。ブルーメの件も全然手応えないし」

「そんなことないよ。卑屈にならないで。言ったでしょ。堤さんは世界一カッコいいよ」

彼は一瞬微笑んだあと、両手で顔を覆い、深く息をついた。

「仕事に私情を挟みまくった分のツケが、来たのかもしれない」