寂しい、なんて思う資格が私にはあるのだろうか。
一度温もりを覚えたからって、欲張りになっている自分が恥ずかしい。
我慢していたけれど、寒さに耐えきれなくなって、私も出していた手をコートのポケットへ入れることにした。
「ただいまー」
「お邪魔します」
通い慣れた彼の部屋に到着。
2週間近く来ていなかったから、さぞかし見事な散らかりっぷりだろう。
洗っていない衣類が床中に散らばり、キッチンの流し台は洗っていない保存容器で埋め尽くされ、寝室のテーブルにも空いたペットボトルやビールの空き缶がたくさん置いてあるに違いない。
そう思っていたのに。
部屋は、ほとんど散らかっていなかった。
「なんで?」
「え?」
「なんで散らかってないの? 私、ずっと来てなかったのに」
まさか、他に誰か――?
ネガティブな想像が頭をよぎる。
「ああ、日曜に自分で片付けた」
堤さんは靴を脱げずに立ち尽くしている私などお構いなしに寝室のクローゼットの方へ行き、コートを脱ぎ、ちゃんとハンガーに掛けた。
思っていたのと違う。
なにかがおかしい。
なんだか、すごく嫌な予感がする。
「マヤ? 入らないの?」
彼が部屋へ上がってこない私を訝ってこちらへ戻ってきた。
いつもより暗い顔をしているのは疲れているからだろうか。
今日はどうして私をここに呼んだのだろう。
私はあまりに不安が大きくなって、足がみるみるこの場に沈んでいくような錯覚に陥った。



