恋愛じかけの業務外取引


『それは残念。でもまあ、俺なりにがんばるからそのつもりで』

「がんばらなくていいから、ほんと」

ただでさえ不安定な状態なのに、急に出てきてかき乱さないで。

弱みを見せているみたいだから絶対にそうは言わないけれど。

『もう遅いし、仕事早く終わらせて、気をつけて帰って』

上島は私を気遣う言葉を添えて電話を切った。

「もう、なんなの……」

鼓動が強い。手にびっしょりと汗をかいている。

すごく久しぶりに上島にドキドキさせられてしまった。

姉御としての私を崩さないため、強気な言葉を探すのが大変だった。

彼はリベンジと言ったけれど、別れを切り出したのって私だったっけ?

『期待外れ』と言われたのがあまりに衝撃的で、そのあたりはよく覚えていない。

上島を引きずっていたわけではない。

だけど『期待外れ』という言葉だけは、今でも胸の中に刺さったままである。

それがなんだ、『キレイになってた』って。

私はなにも変わっていない。

たまたまあの日のコンディションがよかっただけだろう。

ボロボロに疲れた私を見たらまた『期待外れ』と言うに決まってる。

重くなった頭をデスクへ下ろすと、加減を間違えゴンと大袈裟な音が鳴った。

鈍い痛みが広がってゆく。

頭上に携帯の振動を感じた。

堤さんから連絡が入っていたことを思い出し、慌てて体を起こす。

メッセージが1件。送信者は再び堤さんだ。

【車で家まで送るので、今夜うちに来ませんか】