恋愛じかけの業務外取引


固定電話の受話器を耳に当てたまま、携帯を手に取る。

私を求めるように震えているが、今は上島と仕事の電話中だ。

すごく堤さんの声を聞きたいけれど、今は通話ボタンをタップできない。

『マヤさん? 聞いてる?』

「ああ、うん。それで?」

上島と話している間に着信が止まった。

大袈裟だけど、堤さんに私との関係をプツリと切られてしまったようなイメージが湧いて怖くなる。

早くかけ直したい。

そうしないと、本当に関係が切れてしまう気がする。

『それから、マヤさん』

業務の話が一通り終わったと思ったところで、上島が真剣な声で続ける。

「え、まだあるの?」

早く堤さんに折り返したい私は、話を長引かせる上島に理不尽ないら立ちを覚えた。

『リベンジ、させてもらえないかな』

なんのことかもわからない話に、長引きそうな予感がして余計に気が急く。

「リベンジって、なんの?」

『恋愛』

「……は?」

仕事の話じゃないの?

『俺と別れて以来、彼氏いないって言ってたよね』

「言ったけど」

だからってどうしてこのタイミングでそんな話するの。

『マヤさんと付き合ってた頃、俺まだペーペーで、金も自信もなくて。彼氏のくせにマヤさんについてくことしか考えてなかったけど、今は違う。3年経って成長した俺を見てほしいんだ』