「俺、年齢なりに恋愛経験はあるけど、自分から好きになった女を口説き落とせたことってほとんどないかも」
「いやいや、そんなの信じないし」
こんなに女好きのする顔をしておいて、なにをおっしゃいますやら。
「前に言ったじゃん。この甘顔のせいで頼りないと思われるって」
「それは聞いたけど……」
そういえば、私も自分が好きな人にはなかなか好いてもらえないから、妙な親近感を覚えたんだった。
菜摘にわかりやすく誘われているのを聞いたし、どんどん私を虜にするし、この顔で案外恋愛下手だってことを忘れてた。
「だから俺、恋愛にはかなり慎重だよ。好きになったら結果を急がず長期戦。まずは見た目とのギャップをご理解いただかないとね」
「そうだね。オンタイムはユーカリとかグレープフルーツの精油みたいに爽やかなくせに、オフになると汚部屋に住んでるオジサンだもんね」
正直にそうツッコむと、彼は「その通りだけどさ」と口元を引きつらせた。
でも、私はそんなあなたを好きになったよ。
心の中で伝えるが、決して口には出さない。
私だって慎重なのだ。
「好きでもない相手が俺に好意を持ってるからって、気軽に利用するなんて器用な真似はできないっつーの」
私のことは、軽いノリで利用してるくせに。
……って、私が彼を好きになったのは事後だけど。
今となっては、そばにいられるこの状況に感謝すらしている。



