リクエストは肉じゃがだった。
肉じゃがは私も大好きなのだが、ジャガイモやたまねぎを一度に買い込むと重くなるので、なんとなく避けていた。
しかし今日は筋トレ好きの荷物持ちがいる。
遠慮なく材料を買い込み、保存用も含めてちょっと多めに作った。
たぶん、それがよくなかった。
「ぐはー! 腹いっぱい」
堤さんが苦しそうに顔をしかめ、その場で床に寝転がる。
「だからやめとけって言ったのに」
私は呆れた目で彼を見つめ、カップに入れた茶を啜った。
「だってうまいもんはもっと食いたくなるだろ」
「だからって2回もおかわりすることないじゃん」
うまいという言葉はとても嬉しいけれど、保存のための肉じゃがはわずかしか残っていない。
いくら細マッチョだからって、そんなに食べたら太ってしまうのでは。
ていうか、むしろ太ってしまえ。
そしたらきっと、彼の見た目を好いているタイプの恋敵が減ると思う。
「マヤの料理がどんどん美味くなる。たまにしか食えないけど、俺は幸せだ」
「大袈裟。ふだんどんだけマズいもの食べてんの」
「わかってねーな。外食とか買い飯が続くとさ、手作りの素晴らしさがわかるんだよ」
「ふーん」
だったら自分でも作ればいいのに、と言おうとしてやめた。
そう言えばこの人、私が来るまで炊飯器すらないレベルで自炊する気がなかったのだ。
「堤さんってさ、モテるでしょ。私なんかに頼まなくたって、ご飯作ってくれる人くらい、いくらでもいるんじゃないの? ほんとは」
つい口をついてしまった問い。
堤さんはごろんとこちらへ体を向けた。



