恋愛じかけの業務外取引


この美術館には絵画だけでなく、布で製作された作品や石をペイントした立体的な作品、水を使った作品など、様々な種類の展示がある。

広い展示スペース以外にも個別の部屋がいくつかあり、部屋自体が作品、という展示も多い。

そのうちのひとつに入った瞬間、飛び込んできた世界観に、私は小さく声をあげた。

「あ……これかも」

口に出したのは無意識だった。

「ん? どうした?」

堤さんが不思議そうに首を傾げる。

「ディスプレイ、作れるかもって、思って」

部屋の奥へ進み、ぐるりと回って部屋の雰囲気を味わう。

「いい案浮かんだ?」

「いいかどうかはわかんないけど、こういう雰囲気もありなんじゃないかって」

アートなんて私には全然わからないけど、この部屋のコンセプトは素人目に見ても明らかに“化学研究所”だ。

真っ白な天井、真っ白な壁、真っ白な床の、無機質な部屋。

金属製のデスクや実験台、そして試験管やビーカー、シャーレなどが無数に置かれた棚が、いくつか配置されている。

特にインスピレーションを刺激されたのは、試験管が並べられた棚だ。

目線の高さの段に木製のスタンドが取り付けられていて、そこにたくさんの試験管が美しく並べてある。

試験管の中にはいろんな色の液体(おそらく実際は中で固まっている)が入っていて、遠くから見るとキレイなグラデーションを楽しむことができる。

理科の実験道具が、並べ方でこんなにオシャレに見えるなんて知らなかった。