お互いのことについて何気ない会話をしているうちに、私はこのような話をしてしまっていた。
「へぇ、そうだったんだ」
堤さんは私をじっと見つめ、感心したようにため息を漏らす。
たいしておもしろくもないのに、つい自分の話ばかりしてしまった。
堤さんがちゃんと聞いてくれるから、ちょっと調子に乗ったのだと思う。反省。
「まあ、おかげさまで楽しく働いてる、かな」
慌てて話を切り上げる私。
堤さんは眉をハの字にした。
「ていうか、俺んちの家事とかやって平気なの? かぶれない?」
正直なところ、はじめにこの業務外取引を持ちかけられたとき、その点については大きな不安があった。
だけど、幸いにもその心配には及ばなかった。
「大丈夫。堤さんの家にある洗剤類、ほとんどがイズミで扱ってるオーガニックだし」
風呂場にあるせっけんやシャンプー類もオーガニックだ。
刺激を感じたときのため、一応ゴム手袋を用意してあるのだが、ほとんど使わずに済んでいる。
「そうか。俺の担当が自然派商品でよかった」
「うん。おかげさまで、快適な花嫁修業になってるよ」
「花嫁修行って……」
堤さんは感情の読めない複雑な表情で、まじまじと私を見た。
今日は朝から頻繁に彼の視線を感じている。
インテリアショップにいたときも、近くのビストロでランチをいただいているときも、私の顔になにかついているのか、じっと見られることが何度もあった。
今だってせっかく美術館に来たのだから、もっと展示品を見た方がいいと思うのだけど。
私がデートに舞い上がって、自意識過剰になっているだけだろうか。
目を合わせると恥ずかしくなってしまうので、私は展示品の方に集中する。



