「えー、とっても可愛いですのに」
「駄目だ。自分の能力をよく考えろ!」
あたしが耳を塞ぎたくなるような鋭い声でそう怒鳴って、お兄さんはまた出て行っちゃった。
文句を言いに出てきたのかしら。嫌だなぁ、怖い。アミちゃんがかわいそうだよう。
「……怒られてしまいました」
アミちゃんがシュンとしてるから、あたしはアミちゃんの手をぺろりと舐めた。
「慰めてくれるんですか?」
「ありがとうございます」とアミちゃんが、あたしを撫でてくれる。
人の優しさって、手のひらから伝わってくる気がする。ミネちゃんもこんな風に撫でてくれるの。優しく、あたしが嫌じゃないか確かめるように慎重に。
それが分かると、あたし、とっても嬉しくなるんだよ。
思い出したら、ミネちゃんに会いたくなってきた。
きっと心配してるよね。夜だから危ないよって何度も言ってたもん。
泣いちゃってたらどうしよう。ミネちゃんは泣き虫だからあたしも心配になって来た。
「ね、モカちゃん。もし、モカちゃんのママが見つからなくても、私とずっと一緒に居てくれませんか?」
あたしを覗き込むアミちゃん。
アミちゃんのことは好きだよ。だけど。
ミネちゃんは好きなだけじゃなくて心配だから。あたしが見ていてあげなきゃ、カタセくんがミネちゃんに悪さするかもしれないし。



