「あ、わかりますか? えへへぇ。おなかに赤ちゃんが居るのですよ」
「赤ちゃん? じゃあアミちゃんはママなの?」
「そうですね。この子が生まれてきたらそうなりますね」
意外。ミネちゃんより子供みたいなのに。
夢の中の世界では、こんな女の子もママになれちゃうんだね。
注がれたミルクを、ぴちゃぴちゃいわせながら舐める。
うん。おいしいおいしい。ミルクだーいすき。
一心不乱になめていたら、アミちゃんが、タオルを持ってきてくれて体を包んだ。
「モカちゃん、ちょっと汚れちゃいましたね」
ふきふき、こすられてるの、気持ちいい。
つるつるのピカピカになったよ。お風呂に入ったときより綺麗。
そう、まるで、ママの舌で舐めてもらったときみたい。
思い出して、また切なくなる。
ここはお月様の世界だと思ったのに、ここにもママはいない。
夢の中でもママに会えないなんて、悲しいよう。
ギィと扉がきしんで、黒いローブを羽織ったお兄さんが入ってきた。
「おい、アミ」
「あ、お師匠様」
お兄さんはあたしをちらっとみると、不思議そうな顔をする。
「なんだ、この黒猫? どっからつれてきた? こんなの」
「モカちゃんと言うんですって。とっても可愛いんですよう」
「お前まさか……」
「そうです。お義父さまに言われて、使い魔さんを呼んでみたんです」
「使い魔を制御できるほどお前は色々使いこなしてねーだろ。まず自分の魔力をちゃんとコントロールできるようにならねぇと駄目だ」



