みゃーみゃーみゃー。

叫んでみても届かない。

ガリガリガリ。

知らないわよ、扉に傷がついたって。
あたしのせいじゃないわ。
あたしをほっとくのがいけないのよ?

あんまりくやしいから、『こおひぃ』さんにもらった豆を思いっきりかじった。


「にゃっ」


何これ苦い。
匂いはとってもいいのに。

優しいのに意外と冷たい『こおひぃ』さんみたい。

ふたつに割れた豆のかけらを前足でいじくりながら、あたしは不満の声を上げる。


「みゃおーん」

ああもう、素敵なだけの人っていないものなのね。


やがて、窓際の席にミネちゃんがやってきて、コンコンと窓を叩いてあたしのご機嫌をとろうとする。


なによ。ミネちゃんのバカ。知らないもん。

今に見てらっしゃい。にゃーおって甘えたら、誰だってあたしにメロメロなんだから。

『こおひぃ』さんにだって、いつかそっちから、「どうぞおはいりください」って言わせてやるんだから。


覚悟しててね、『こおひぃ』さん






【小さなお客様・Fin.】