「夜に遊びに行っちゃ駄目よ」
「みゃおん」
大丈夫。ちゃんと帰ってくるから。
ちょっとだけよ。
あたしはくるりと振り向き、尻尾をゆらゆら動かしていてモカちゃんの行ってきますの合図を送る。
「いいじゃん、美音。モカちゃんだって少しは自由に動きたいんだよ」
勝手なこと言わないでくれる? カタセくん。
そうやってすぐあたしを追い出そうとするんだから。
でも今はいいわ。ママとお話したいの。
だって、こんなに綺麗なまんまるお月様。久しぶりだもの。
ぴょんぴょんと屋根をわたって、カタセくんから見えないところまでくる。
ようし。これでママとゆっくりお話ができるぞう。
「みゃーおん」
空に浮かぶ、まんまるのお月様。
ねぇ、ママ。あたしは元気だよ。毎日楽しくしてる。たまにカタセくんにはむかつくけど、ちゃんと仕返ししてるから大丈夫。
ママは?
お月様の国はどんなところなんだろう。
そこにはパパもいる?
魔法がもし本当にあるなら、あたし、ママに会いたいようー!
「みゃー」
そのとき、お月様がチカッと光った。そしてあたしの視界が、急にぐるぐる回りだす。
え? なに?
何なのこれ。
「ふみゃーん」
あたしの意思を無視して、ぐるぐるぐるって世界は回る。知ってる? 回ると白と黒がグルグルって渦巻きを作るの。そのうちにあたし、ふらふらになって目の前が真っ暗になっちゃった。



