「みゃーおん」

「あ、こら」


キッチンに入り込んで邪魔しちゃえ。

ジャンプして流し台に上がったら、なにかを蹴飛ばしてしまった。
カシャンという音と同時にカタセくんが悲鳴をあげる。

ああこれ、スマホってヤツだ。ミネちゃんが持っているのとおんなじだね。


「モカちゃん、そんなところにのぼっちゃ駄目よ。片瀬くんのスマホが壊れちゃうじゃない」


ミネちゃんは、すぐさまそれを拾い上げて画面を見て、そして眉を寄せる。


「片瀬くん」

「なに? 美音」

「このカクテルの意味、知ってて作ったの?」

「え、『完全なる愛』じゃなかったっけ」

「基本的には『出来ない相談』の方が多いって書いてあるわよ、ここに。一般的にはスマートな断り方だって。
酷いわ、私と別れたいわけ? 片瀬くんの方が私に付き合ってっていったくせに!」

「はぁ? 違うって!」


ミネちゃんがカタセくんににじりよっていって、ものすごく焦ったようにオーバーアクションで弁解している。

なんだかシュラバがはじまったみたいね。
カタセくんが困ってるからいい気分だわ。

あたしのミネちゃんを、いっつもいっつも奪うんだもん。
平日の夜なのに遊びに来るなんてルール違反だよう。