「ぶにゃーっ」
「みゃっ」
ガリっと手を引っかかれて、あたしはびっくりして毛を逆立てた。
何、何?
と思ったらのコタツのなかから、丸々と太ったキジトラのネコが出てきた。
「カズコさん!」
ミネちゃんがそう呼ぶ。
ズコさんと呼ばれた猫は、大きな体でどんどんあたしを押しだして、こう言う。
「ぶみゃー」
あんた。何、人の家にノコノコと入り込んでんのよ。
「みゃー」
勝手に来たんじゃないよ。
ミネちゃんに連れてきてもらったんだもん。
あたし、ちゃんとただいまって言ったよ?
「ぶみゃおん」
とにかく、ここは私の家だからね。新参者は大人しくしてなさいよ。
昔から、ミネちゃんのひざは私のものって決まってるんだよ。
「みゃー!」
えー!
ダメだよ。ミネちゃんのひざは、あたしのだよう。
「ぶみー!」
ケンカを始めるあたしたちを、ミネちゃんは困ったように見る。
そして、カズコさんを持ち上げて目線を合わせてお話しした。
「こらー、カズコさん。小さい子に意地悪しちゃダメよう。モカちゃんって言うんだよ。仲良くしてあげてね」
「ぶみー」
知らないわよ、そんなの。
「みゃーお」
ミネちゃん、カズコさん、酷い事言ったよう。
「よしよし、仲良くなってきたかな」
ニコニコするミネちゃん。
あたしたちの会話、全然通じてないわ。
それどころか、カズコさんはそのままミネちゃんのお膝にのしのし乗り上げて、お昼寝を始めてしまった。
うもう、知らない!
あたし、お散歩してくるもん!
結局その日はなかなかミネちゃんのおひざを返してもらえなくって。
ようやく寝る時間になって、ミネちゃんのお布団でひっつくことが出来た。



