ミネちゃんは頬を染めて今更髪の毛を撫でつけたり、カバンから鏡を出して顔をチェックしたりしている。
キンチョーしてるんだね、きっと。
でも大丈夫よ。ミネちゃん、なんていうか中身が可愛いから。


「よしっ」


ようやく覚悟を決めたらしく、勇んで扉に手をかけたその時。
扉が開いて、ミネちゃんの頭に激突した。
ごいん、ってすっごい音がしたけど。ミネちゃん、生きてる?

飛び出してきたのは、すっごく綺麗なお姉さんだ。
背も高くて、ミネちゃんがお仕事に行くときに来ているようなお洋服を着ている。


「あ、ごめんなさい」


お姉さんは顔を隠すようにして、ミネちゃんに頭を下げて走っていった。
あたしのひげをくすぐるように落ちてきたのは水滴。
下から見上げるあたしには、あのひと泣いていたように見えたんだけど。


「待てよ、凪(なぎ)」


続けて出てきたのはこぉひぃさん。
だけどこぉひぃさんは、おでこを押さえてうめいているミネちゃんに気付いて、走るのをやめた。


「大丈夫ですか?」

「いたたた。あ、すみません、大丈夫です」

「すみません、うちのが……」


ミネちゃんは、おでこに手を当てたまま、こぉひぃさんをまじまじと見た。
あたしも聞き逃さなかったわよ。“うちの”って言ったわ。