次に目を開けたとき、やっぱりミネちゃんが泣いてた。


「モカちゃん、起きた。よかった」


辺りを見たら、そこは病院だった。
いつものおじさん先生が、あたしの瞼を押さえて目に光を当ててみる。

目が乾く乾く!

そのあと口を押さえられた。

あがががが。

おじさん、ちょっと乱暴なのよ。


「にゃおん!」

「うん。声も出るようだね。軽い脳震盪だったんだろうね。たんこぶと擦り傷だけだと思うけど。念のため今日は安静にしてあげて」

「はい。……よかった。モカちゃんなかなか目を覚まさないから、死んじゃうかと思った」

「はは。大げさだね。大丈夫。案外と生き物は頑丈なもんですよ。でも、こんな小さな生き物を足蹴にするような人間はいただけない。君は何もされなかったのかい?」

「はい。私は。……近くのお店の人が助けてくれたので」


ミネちゃんの頬が染まる。
あら? なんだか嫌な予感がするんだけど。

病院から出ても、ミネちゃんはあたしを抱っこしたままだった。


「今度、喫茶店のマスターさんにお礼に行かなきゃね」

「みゃおん」

「すっごく恰好よかったんだよぉ。あんなふうに助けてもらえるなんて、運命かもしれない。マスターさん、独りなのかなぁ。私なんて、小娘過ぎて駄目かなぁ」


もう、ミネちゃんったら相変わらず惚れっぽいんだから。
ドラマみたいなことがあると、すぐに恋に落ちちゃうよね。

でも、ダメだよ。こぉひぃさんはあたしが先に見つけたんだからね!


「たんこぶ治ったら、モカちゃんのこと見せに行こう。心配してくれてたから」


ミネちゃんは、夢見るような瞳でそんなことを言った。

これ、だめだわ。
聞く耳持ってないってやつ。

あたしも、恋をするならこぉひぃさんがよかったのに。
だけど、大好きなミネちゃんなら仕方ないかな。
譲ってあげてもいいわよ。