「リボン付いてるから飼い主がいるんだろうな。雨やむといいね。俺も早く帰りたいな。折角今日は早く終わったのに」

ふうと、おじさんが息を吐き出した。

すると少しだけ雨が弱まった気がする。
お空を見ると雲が薄くなっているもん。

おじさん。もうちょっと頑張ってよ。

あたし、真っ暗になる前にお家に帰りたいの。


「雨やまなかったら今日だけ家に来る?」

「みゃーみゃ」
ううん。
あたしミネちゃんとこに帰るよ。

ずっと一緒って約束したんだもん。


「やまないし迎えを頼むか。サユにも見せてあげたいしな」


おじさんはそう言って今度は胸のあたりに手をいれて何かをとりだした。

ああこれは知ってるわ。
『ケータイ』ってミネちゃんが言ってた。

それにしても色んなキカイを持ってるのね。
おじさんすごいわ。何者なのかしら。


「もしもし。今どこに居る? サユと一緒? ……うん。そう、雨で動けなくなってる。迎えに来てくれる?」


何のお話ししてるんだろう。

でもこの声は何となく心地いい。優しい音色に聞こえるのは、おじさんが優しい気持ちだからかしら。


「え? じゃあ近くだ。桜屋の軒先だよ。よりによって今日定休日みたいで。駅で傘買ってこればよかったんだけどさ。ところで、今ネコがいてさ。すごく可愛いんだぜ。サユに見せたいから、静かに来いよ」