「みゃーん」
ミネちゃん、どこに行ったの? 帰って来るよね? あたしのこと、置いて行ったりしないよね?
“別のおうちの子になるってことさ、猫がもらわれていくのと一緒だよ”
昨日の、カズコさんの言葉が頭をかすめてぞくりとした。
もしかして、あたしは一緒に別のおうちの子にはなれないの?
やだやだ、やだよ。
あたし、お別れなんてしてないよ。
お別れだよって言われてもしたくないよ。
だってミネちゃん、言ったじゃない。
一緒に暮らそうって、ずっと一緒だよって。
その日、あたしはお外の門の前で、ミネちゃんをずっと待っていた。
何度かお母さんがあたしを無理やりに連れ戻したけど、またすぐ戻って青い車を待つ。
おかしいな。
この間、ミネちゃんに言ったのはあたしなのに。
“お別れってどこにでもあるよ”って。
あたしは猫だから、それはニンゲンよりも多く、思いがけなくやって来るってことも、そのためにいつも全身で好きって言おうってことも、ちゃんと分かっていたはずだったのに。
ニンゲンと暮らして、ちょっとおかしくなっちゃったのかな。
諦めたくないよ。
お別れなんてヤダ。
あたしはもう、別の名前なんかいらない。
ずっとモカでいたい。
お願い、ミネちゃん。あたしをモカのままでいさせて。



