その日、お父さんは夕ご飯前にカタセくんをお酒に誘い、みんなが食べ終わってからも飲み続けていた。あたしはカズコさんとコタツの中でぬくぬくしながらお話してたし、お母さんは美音ちゃんと夜遅くまで話していたみたい。

だから、起きたときはもうお昼近くて、美音ちゃんは慌てて走り回っていた。

「じゃあ、行ってくる。ごめんね、バタバタして」

「はいはい、気を付けていってらっしゃい。祥吾くんよろしくね」

「はい」

ショーゴくんだって。なんか変な感じ。
カタセくんはカタセくんだよねぇ。

ぷぷぷ、と思っているうちに、ふたりは慌てて青い車に乗って行っちゃった。

「みゃー」
あれ? あたしは一緒じゃなくていいの?

慌てていたからかもしれないけど、ミネちゃんたら、何も言わずにいなくなっちゃった。

「みゃーみゃー」
ねぇ、お母さん、美音ちゃんたちどこに行ったの。

「モカちゃん、大丈夫よ。寂しくないからね。お母さんもお父さんもカズコさんも一緒だからね」

お母さんのお返事に、あたしはますます不安になってきた。
寂しくないかもしれないけど、あたしはミネちゃんがいいよ。ニンゲンなんて信じられないって思っていたあたしに、優しくしてくれたニンゲン。ミネちゃんのおかげで、あたしはニンゲンが怖くなくなった。