「みゃー」
どうして?
「ぶみゃー」
あのふたり、結婚するんだろ?
だったら美音ちゃんは他のうちの子になるんだ。猫がもらわれていくのとおんなじさ。
お父さんはそれが嫌で飲んだくれているのさ。
「みゃっ」
あれっ、そうなの?
お引越しなんて、聞いてないよう?
「ぶーみゃ」
ああ寒い寒い。こんなところで話してないで、あたしらもコタツに行こう。
話はうやむやになっちゃったけど、それには賛成。
ミネちゃんと住んでいるあのアパートよりも、この家は寒いんだもん。
カズコさんは扉を開けるのが上手だ。このおうちの戸は横に開くんだけど、カズコさんは上手に爪を引っ掻けて開けてくれる。まあ、閉めはしないんだけど。
「ぶみゃーお」
どれ、品定めでもしようかね。
カズコさんは、おとうさんとおかあさんと向かい合って、まっすぐ背筋を伸ばして上ずった声を出しているカタセ君のところに向かうと、いきなりのしっと膝に乗った。
あーあ。あれは重たい。
カズコさん重量級だもん。それにスーツってやつだよね? 爪がね……そのね。さすがにあたしも遠慮したのに。やるなぁカズコさん。
「うわっ。重っ」
カタセくん、正直。
しかし、カズコさんは若干気を悪くしたのか、脅すように爪を伸ばした。
「あら、猫大丈夫? カズコさんっていうの、この子。昔からここにいるのよう」
「へ、へぇ。かわいい……ですね」
おかあさんに笑顔を返すカタセくん。
カタセくんも頑張ってるなぁ。ちょっと見直しちゃう。



